Column
2025.05.07
次世代通信 × アバターロボットによる「遠隔区民サービス」の実証レポート
– 次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業 –
avatarin株式会社では、 東京都が実施している「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)※1にて、開発プロモーターとして採択されている株式会社キャンパスクリエイトの支援のもと、NECネッツエスアイ株式会社、国立大学法人電気通信大学先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター藤井研究室、東芝インフラシステムズ株式会社とともにアバターロボット「newme(ニューミー)」を活用して、大田区役所本庁舎の窓口においてローカル5G及び分散アンテナシステム(DAS)を利用した遠隔での行政サービス案内、多言語対応などの有効性について実証実験を行いました。
fig1 実証イメージイラスト
実証実験のフィールドとなる大田区役所本庁舎 は、蒲田駅から徒歩1分の場所にあり、多くの人が行き交う混雑エリアに位置しています。また、大田区ではデジタル技術の活用による業務効率化を図り、多様化する区民ニーズをより的確に捉えた、質の高い行政サービスの提供など誰もがいつでも快適に情報を利活用できる環境づくりを大きな柱として、情報化を通じた「ずっと住み続けたい大田区」の実現を目指して います。
大田区役所本庁舎のような多くの人が行き交うエリアでは、一般的なモバイルネットワークでは時間帯によって、通信の混雑などが発生する可能性があり、アバターロボットのように大容量データの送受信を要する場合は、安定した接続が維持できずサービス提供に影響が出る可能性が考えられます。本実証では産学官が連携し、大容量・低遅延・同時多接続を実現するローカル5Gと、超低遅延による遠隔コミュニケーションと自ら操作することによるプロアクティブなサービス提供を得意とするアバターロボット「newme」を組み合わせて、「遠隔区民サービス 」の実証を行いました。本実証における遠隔区民サービスとは、遠隔地にいるオペレーターが来庁者に対して、newmeを活用して目的に合ったフロアの案内や必要書類の案内を行うことです。
本実証の内容をご紹介します。
fig2 実証実験概要図
本実証は、2024年9月26日〜12月20日の期間で実施しました。大田区役所本庁舎の2階フロアにローカル5Gの基地局を設置し、1階の戸籍住民課窓口周辺と総合受付周辺それぞれに1台配置したnewmeを通じて、多言語対応可能なオペレーターが遠隔区民サービスを提供しました。
fig3 2階に設置したローカル5Gの基地局※2
fig4 1階戸籍住民課窓口付近で来庁者が案内を受ける様子
本実証の様子をご紹介します。
区役所の入口を入ると、遠隔から案内を行うオペレーターがnewmeで来庁者を出迎え、「館内のご案内をしております。お探しの窓口はございますか?」と声を掛けます。
来庁者が目的の手続きや窓口を伝えると、オペレーターが適切な窓口の場所を案内します。
初めてのサービスに驚かれる方も多い中、「人が対応してくれるので、こちらからの質問を正確に理解して、案内してくれるので分かりやすかった。ロボットから近づいて話しかけてくれるという、人でないとできない対応が感じられ、とても良い印象を受けた。」といった嬉しい声をいただきました。
また、目的の一つとしていた外国人来庁者に対しても、慣れない土地での複雑な手続きを英語でご案内し、100名以上の方に利用いただきました。
fig5 4階に設置したDAS※2
12月9日からは、分散アンテナシステム(DAS)を4階に設置し、1階に加えて、4階でもローカル5Gを利用したnewmeによる遠隔区民サービスの実証を行いました。これにより、1階のnewmeで案内を行ったオペレーターが、4階のnewmeで来庁者をお迎えして引き続き案内を行うことで、同じ来庁者に対して庁舎入口から手続きの窓口までシームレスに誘導することが可能になりました。
fig6 1階で来庁者が案内を受ける様子※2
fig7 1階で案内を受けた来庁者が、4階で引き続き案内を受ける様子※2
ローカル5Gを活用することでネットワークの混雑などに影響されることなく、newmeによる遠隔区民サービスを安定して提供することができました。また、DASを設置することで4階でもローカル5Gを活用することができるようになり、1階で案内したオペレーターが4階でも引き続き案内を行うことで、来庁者が訪問理由を各フロアのスタッフへ改めて伝える必要がなく、よりスムーズで利便性のあるサービス提供の可能性について検証ができました。
今回の長期間にわたる実証により、数多くの問い合わせ対応を行うことができ、来庁者の様々なニーズを捉えることができました。
同時に、来庁者のニーズに合わせて案内のトレーニングを行うことで、オペレーターの案内スキルも向上し、結果として対応可能な案内が増え、48日間で2,601件の遠隔区民サービスの提供を達成することができました。
本実証を通じて、ローカル5Gとnewmeを活用した遠隔区民サービス の新たな可能性を検証することができました。今後も、より利便性の高いサービス提供に向けて改善に取り組んでいきます。
本実証にご協力いただきました皆さま、ありがとうございました。
※1 | 東京都次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業 東京都では、5G技術をはじめ、将来的な「Beyond5G」等も含めた次世代通信技術を活用した製品・サービス開発に取り組み、社会実装とともに企業価値向上を目指すスタートアップを支援するため、「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業」を令和5年度より実施しています。より具体には、東京都と協働して支援を行う事業者を開発プロモーターとして募集・選定し、スタートアップ企業に対し多角的な支援を行います。開発プロモーターは、3ヶ年度にわたり都内スタートアップ企業に対し、連携事業者(通信事業者や実証フィールド提供者、研究機関、VC・金融機関等)と連携しながら、資金的、技術的な支援やマッチング支援等を行い、次世代通信技術等を活用した製品・サービスの開発及び事業上市を目指します。 ▼詳細はこちらをご参照ください(事業WebサイトURL) https://next-5g-boosters.metro.tokyo.lg.jp/ ![]() |
※2 | 本コラム内の画像の一部は、以下の動画より引用しています。 大田区とavatarinのローカル5Gと遠隔操作ロボット「newme」を使った実証実験が第2期に突入しDASを使って複数フロアで展開 [動画]. YouTube. https://youtu.be/7yx-3Zo0e_4?si=6KZzt6BWvCN_wOvu |