インタビュー連載 難病ALSと戦う井上さんとnewmeの出会い 〜episode2〜

Column

2021/5/19

インタビュー連載 難病ALSと戦う井上さんとnewmeの出会い 〜episode2〜

瞬間移動を可能にし、世界中どこでも、“新しい自分”を介してコミュニケーションや活動を可能にする。そんなコンセプトを掲げてavatarin(アバターイン)が手がけるアバターロボット“newme(ニューミー)”は、自分の意思で遠隔操作ができる分身ロボットです。

〜episode1〜はこちらから

 

その活用法や求められる機能&進化を探るべく、“newme”を実際に使ってもらう、というプロジェクトが2021年1月にスタート。本プロジェクトに協力してくださるのは、2017年に難病「筋萎縮性側索硬化症(以下:ALS)」を発症した井上浩一さん。インタビュー連載を通じて、“newme”の可能性や改善点をレポートしていきます。

 


 

連載2回目は、井上さんの“newme”使用レポート。2021年の正月に初めて使用してから3月末までの約4ヶ月間で、週に1回以上を使用したという井上さん。家族や友人、元同僚と“newme”を介してコミュニケーションを取り、感じたこと、気づいたことなどを教えてもらいました。

 

井上さんのご自宅に“newme”が導入されたのは、2020年の年末。初めて対面した“newme”のシルエットは「想定外だった」と言う。

 

「“分身ロボット”と伺っていたので……映画などの影響からか、人間のような形だと想像していたんです。実際に届いたら、とてもスリムかつ近代的なデザインで驚きました。僕の“newme”はスタンド部分にANAのコーポレートカラー、ブルーを用いており、それが部屋に馴染んでいるみたいで。インテリアだと思う方が多く、ロボットだと伝えると、僕と同じようにとても驚きますね」

 

“newme”を初めて使用したのは、2021年1月2日。

妹家族が新年の挨拶に井上さんのアパートを訪れた際、別の場所にいた井上さんのご家族と“newme”を通じて会話をしたそう。

 

「妹家族は4人、私の家族は6人。全員で僕のアパートに集合するのは難しい、ということで、“newme”を使ってみることになりました。接続されるやいなや、画面越しに、長男から何かについて怒られたのですよ。その瞬間、あまりの臨場感にビックリしたことを覚えています。スマホのビデオ通話とは、まったく違いましたね。画面が大きいことに加えて、目線の高さが同じということも影響しているのかもしれません。怒られているはずなのに、よりリアルなコミュニケーションが可能になることへのワクワクから、嬉しくなりました」

その体験から、“newme”への関心度が急上昇。ご自身のFacebookアカウントで通話相手を募ったところ、国内外の友人や元同僚たちから“体験してみたい!”というメッセージが多数届く。

 

 

井上さんのモニタリングにご協力してくださった米国や日本企業の方々

 

「僕の近くに寄ってきたり、お辞儀をしたり。皆さん、初めて手にしたおもちゃで遊ぶ子供のような反応を見せます。僕自身は受け身なので、相手の方がどのように操作するのか、毎回とても興味深く観察させていただいています。なかでもおもしろいのが、日本人と外国人の操作の違い。日本人の方はまず、ゆっくりと恐る恐る動かすのに対して、外国人の方は、最初から躊躇することなく猛スピードで動かすんです(笑)。お国柄というか、性格の違いが垣間見られて面白いのですよ」

「アメリカからアクセスしてくれた友人は、“まるで君の家にいるようだ”と喜んでいました。すると相手も、PCを手に持ち自宅の中をぐるりと巡ってくれたり、家族を紹介してくれたり、滞在中の別荘のまわりの景色を見せてくれたり……。家の中にいながら新しい景色や環境、人と出会えることがとても嬉しかったです」

 

“newme”について頻繁に寄せられる質問のひとつが、「ビデオ通話との違いは?」。実際に体験した井上さんは、どう感じているのだろうか。

 

「スマホやPCを自分で動かせない僕にとって、ビデオ通話は、固定されたスクリーンに限られます。その画面が相手の意思によって動くだけで、迫力は格段に増します! また、相手の顔がほぼ同じ大きさでスクリーンに映し出されることや、お辞儀などの動作ができることも、親近感が増す要因かと。相手がすぐ隣にいるような感覚とまではいきませんが、存在はたしかに感じられる。単身赴任中の方の息子さんが、“newme”を“お父さん”と呼んでいると聞き、納得しました」

 

井上さんのモニタリングにご協力してくださった米国や日本企業の方々

 

「ビデオ通話は人数が多くなったり、時間が長引いたりすると、相手の集中力が切れる様子が、画面越しに伝わってくるんですよ。操作もできず、ただ画面に向かって話しているだけですから、仕方ないですよね。一方で、“newme”を介する会話では、そのような印象を受けたことがまったくないんです。それは相手も僕を身近に感じている証拠で、“newme”は一対一のコミュニケーションをしっかりと成立させる効果があると感じています。“コミュニケーションツールとしてのロボット”を、見事に体現していますね!」

 

「“newme”を通して、僕自身がどのように見えているかが知りたい」という井上さんが、次回、“newme”の操作にチャレンジ! 遠隔でとある施設を見学する様子をレポートします。

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