空港間リソースシェアによるアバターロボット実証レポート
-オペレーターが新千歳空港と旭川空港の「newme」を切り替えながら案内業務を実施-

Column

2026.1.13

空港間リソースシェアによるアバターロボット実証レポート
-オペレーターが新千歳空港と旭川空港の「newme」を切り替えながら案内業務を実施-

空港運営は、業務の多様化・複雑化が進む中で、人手不足や多言語対応の増加といった課題が重なっており、限られたスタッフ体制のもとで、業務効率化と利用者へのサービス品質向上をどのようにして両立させるかが検討されています。
こうした背景のもと、2025年8月27日から9月26日まで(土日祝日を除く)の期間に、国土交通省特定新技術補助金「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」のもと、新千歳空港と旭川空港の2空港において、アバターロボット「newme」を活用した遠隔案内のリソースシェアに取り組みました。

fig1:実証のイメージ

 

今回の実証では、地理的に離れた2つの異なる空港に設置したnewmeを、オペレーターが切り替えて接続・操作することで、案内業務を運用可能かどうかを調査しました。本実証を通じて、空港業務における新たな遠隔案内スタイルの実現可能性を探りました。

 

本実証の概要をご紹介します。

新千歳空港に5台、旭川空港に2台、合計7台のnewmeを配置し、東京のオペレーションルームから1人のオペレーターが最大3台を切り替えながら案内業務を行いました。

newmeの通信については、各空港の通信環境に応じて選択しました。同時間帯に複数の到着便が重なり、キャリア通信の混雑が想定される新千歳空港ではローカル5Gを採用し、旭川空港では電波状況の良好なキャリア通信を用いて遠隔案内を実施しました。

案内エリアは、新千歳空港では国際線到着フロアを中心に、旭川空港では国内線到着フロアを中心に設定し、両空港で異なる利用者層を想定した案内を行いました。

また、新千歳空港では、弊社社員以外の外部人材のみでnewmeを運用する期間を設け、運用上の課題の有無についても調査しました。

 

各空港での遠隔案内の様子をご紹介します。

新千歳空港では、利用者が自身の行き先を確認することによって滞留が起きやすい場所にnewmeを配置し、立ち止まっている利用者に対して、オペレーターから声をかける形で案内を提供しました。また、利用者の滞留や待機列が発生している場所へnewmeが移動して声をかけ、案内を行う運用も実施しました。

利用者からは、「ロボットのほうから声をかけてくれるサービスは新しい。質問しやすい」といった声が寄せられました。

 

fig2:新千歳空港で外国人の利用者に案内している様子

 

旭川空港では、国内利用者が中心であったことから、施設案内や交通案内に加え、雑談を交えたコミュニケーションを行う場面が多くありました。一方で、国際線の離発着に合わせて国際線エリアへ移動したnewmeでは、台北便到着時に中国語での案内も実施しました。中国語でのコミュニケーションが可能であることが利用者に伝わると、問い合わせ内容がより多岐にわたる傾向がありました。案内内容を含めて調査することで、多言語による案内提供時の利用者行動や反応の変化についても確認することができました。

 

fig3:旭川空港で日本人の利用者に案内している様子

 

fig4:旭川空港でオペレーターが中国語で案内している様子

 

オペレーターは利用者の混雑状況に応じて、2つの異なる空港に設置してあるnewmeの中から対応すべき機体を自ら判断し、切り替えながら案内を行う必要があるため、通常使用するnewme操作用のノートPCに加えて拡張モニターを設置し、各空港の案内に必要な情報をすぐに確認できるようにオペレーションのデバイス体制を構築しました。

 

また、newmeに新しく実装された保留機能を活用することで、オペレーターはカメラを物理的にオフにすることなく、保留ボタンを押すだけで対応中のnewmeを素早く切り替えられるようになりました。あわせて、対応中であることを機体に表示できるようになり、利用者にとっても一目で状況が分かるようになりました。

 

このように、オペレーター側の運用においても空港間を切り替えて業務を行うための改善を加えたことで、複数台のnewmeを運用しやすい体制が整いました。その結果、空港ごとに異なる案内内容が求められる場合でも、オペレーターは混乱することなくスムーズに対応でき、2つの空港を切り替えながらも安定したサービス提供を維持することができました。

案内件数は、合計1,074件にのぼり、そのうち約7割が外国語による対応でした。

案内内容の内訳を見ると、JR・バス・レンタカーなどの2次交通に関する質問が約4割、空港施設内の場所や設備に関する質問が約4割を占めており、空港利用者の移動支援と施設案内の双方において、newmeが有効に活用されたことが分かりました。

 

新千歳空港におけるnewmeの保管や充電などの日常的な運用は、一定期間、外部人材によって実施しましたが、大きなトラブル発生せず、安全に行うことができました。担当者を対象とした業務に関するアンケート調査では、業務初日において運用面で難しさを感じたとの回答が一部ありましたが、2日目以降は評価が大きく改善し、安定して業務を遂行できていることが確認できました。これらの結果から、導入企業様によるnewmeの運用が十分に可能であるということが示されました。

 

今回の実証を通して、地理的に離れた2つの空港間を、別拠点からオペレーターがnewmeを切り替えながら遠隔案内業務を行うリソースシェアを、問題なく実施することができました。国際線到着フロア中心の新千歳空港と、国内線到着フロア中心の旭川空港という利用者傾向の大きく異なる環境においても、オペレーターは両空港の到着便の状況に応じて、newmeを適切に切り替え、多様な問い合わせに対応できることが確認できました。

 

また、今回の実証期間中の一部では、神田外語学院の学生がインターンとして遠隔案内業務に参加しました。学生たちは、学校で培った語学力を活かし、newmeを通じて海外からの利用者に対して空港施設の案内を行いました。訪問経験のない空港、かつ接客経験もない中での業務であったため、不安に感じる場面もありましたが、newmeの操作や遠隔案内という新しい形の接客形態にも短期間で順応し、積極的に利用者へ声をかけながら案内業務を実践することができました。

newmeを介した案内では、対面接客とは異なる判断や工夫が求められる場面も多く、学生にとっては座学では得られない実践的な学びにつながったものと考えています。本実証での経験が学生にとって将来のキャリアを考える上での一つのきっかけとなることを期待しています。

 

fig5:新千歳空港で案内を行っている神田外語学院の学生の様子

 

今回の実証を通して得られた成果を次のステップへとつなげ、さまざまな場所で生じる人手不足や多様な案内ニーズに対して、newmeによる遠隔案内の可能性を、今後も継続的に広げていきます。

 

本実証にご協力いただきました皆さま、ありがとうございました。

 

 

 

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