ローカル5G × アバターロボット「newme」の活用レポート
-地域デジタル基盤活用推進事業-

Column

2025.06.02

ローカル5G × アバターロボット「newme」の活用レポート
-地域デジタル基盤活用推進事業-

ソニーワイヤレスコミュニケーションズ株式会社(以下:ソニーワイヤレスコミュニケーションズ)が採択された総務省の「令和6年地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」に参画し、北海道エアポート株式会社の協力のもと、新千歳空港を起点とした周辺地域の観光振興を空港業務の省力化と併せて実現する実証事業を行いました。

 

 

新千歳空港では旅客数が増加している中、空港内の人材不足が心配されると同時に、業務の省力化が課題となっています。特にインバウンド対応可能な多言語スキルを持つスタッフ不足が懸念されており、アバターロボット「newme(ニューミー)」を活用し、遠隔からインバウンド接客の案内支援を行うことで、空港内の人材不足解消の可能性を検証しました。
あわせて、重い荷物を持った旅行者の負担軽減という観点から、省力化を目的に荷物運搬ロボットを導入し、移動支援に活用する検証も実施しました。

 

新千歳空港における通信環境は、時間帯によっては通信の混雑が生じることが予想されます。そこで今回は、ローカル5Gを活用することで通信の混雑を回避し、オペレーターがnewme5台と荷物運搬ロボット1台の最大合計6台を同時に稼働する形で、実証を実施しました。(fig1参照)

 

 

 

本実証の内容をご紹介します。

fig1 実証概要

 

本実証は第1期と第2期の2つのフェーズに分けて、新千歳空港の国際線ターミナルビル2階にある国際線到着ロビーから国内線ターミナルビルに向かう連絡施設エリア(fig3参照)で実施しました。
第1期では、国際線到着ロビーにnewmeを4台、連絡施設エリアにnewme2台と荷物運搬ロボット1台を配置し、東京から英語や中国語の言語スキルを持つ3名のオペレーターが、当社作成の新千歳空港案内マニュアルを基に遠隔で案内業務を行いました。
第2期では、国際線到着ロビーにnewmeを5台、連絡施設エリアにnewmeのヘッドユニット部分を搭載した荷物運搬ロボット1台を配置して、第1期と同様に3名のオペレーターが遠隔で案内業務を行いました。

 

 

fig2 新千歳空港での実証用に装飾したnewme

 

fig3 本実証の構成

 

fig4 東京 日本橋でオペレーターが案内業務行なっている様子

 

 

第1期、第2期を通じて、オペレーターは国際線到着ロビーにおいて、到着口から出てくるお客様の動線や滞留のある場所に合わせて、近くに設置されたnewmeに切り替えながら、空港施設内や観光、二次交通の案内を行いました。3名のオペレーターが異なる場所に設置した複数台のnewmeを切り替えて活用することで、困っているお客様に適切なタイミングでお声がけし、案内を提供することができました。

 

到着口から連絡施設までの動線の間にnewmeを配置した際、特に多くのお客様に利用いただくことができました。newmeをこの場所に配置にすることで、到着口から出てきたお客様は案内所を探したり、引き返したりすることなく、次の行き先に移動する動線で、必要とする案内を受けることができるようになりました。また、口頭での案内だけでは目的の場所が分かりにくい場合には、オペレーターがnewmeを操作し、お客様と並走しながら目的地まで案内しました。(fig5参照)

 

newmeによる遠隔からの案内に抵抗のないお客様も多く、積極的に利用いただきました。案内での利用以外にも初めて見るお客様が新しいサービスとして興味を持ち、写真や動画を撮影する様子も多く見られました。

 

fig5 お客様と並走しながら案内を行なっている様子

 

fig6 海外からのお客様がnewmeに話しかけている様子

 

第1期の連絡施設エリアでは、国際線ターミナルビル側と国内線ターミナルビル側にそれぞれnewmeを1台配置し、手荷物の多いお客様にお声がけをして、荷物運搬ロボットの利用方法を案内しました。オペレーターはnewmeでお客様が荷物を載せたことを確認し、遠隔から荷物運搬ロボットの自動走行ボタンを操作して、連絡施設の反対側まで荷物を運ぶサービスを提供しました。スタート地点で案内を行ったオペレーターが、到着地点のnewmeで「お疲れさまでした!」と迎えることで、お客様に安心感とおもてなしを感じていただきました。

 

fig7 連絡施設で荷物運搬ロボットが自動走行してお客様の荷物を運んでいる様子(第1期)

 

第2期では、荷物運搬ロボットにnewmeのヘッドユニット部分を搭載することで、お客様への案内業務と荷物運搬業務を同時に1台のロボットで、効率良く実施できるように改良を行いました。この改良により、連絡施設に配置していた2台のnewmeが不要になり、国際線到着ロビーに配置できる台数を増やすことができました。オペレーターは荷物運搬ロボットに搭載したヘッドユニットで遠隔からお客様の様子を確認しながら、コミュニケーションを取ることができるため、事前に記録したルートを自動走行するだけでなく、お客様や案内型自動走行車(SC-1)を追従して荷物を運ぶサービスの提供が可能となりました。

 

fig8 ヘッドユニットを搭載した荷物運搬ロボット(第2期)

 

fig9 案内型自動走行車を荷物運搬ロボットが追従して荷物を運ぶ様子(第2期)

 

お客様の中には、ロボットが自身の後ろをついてくる様子に愛着を感じる方もいらっしゃいました。荷物を運んで走行している間も、オペレーターはお客様とコミュニケーションを取ることができるため、空港施設や2次交通の案内に関する多くの情報を提供することができました。

第1期、第2期を合わせた12日間の実証期間で、遠隔から案内対応を行った件数は917件、そのうち9割以上が外国語での対応でした。お客様へのアンケート調査では、5段階評価で4以上の評価が9割以上という非常に高い満足度が得られました。
実証エリアでは、最大6台のnewmeが同時に接続した状況で案内業務を行いましたが、ローカル5Gの活用により、混雑する時間帯でも安定したサービスを提供することができました。
また、国際線到着ロビーや連絡施設に設置した複数台のnewmeを、それよりも少ないオペレーターで遠隔から多言語で案内できたことに加え、荷物運搬ロボットの活用により旅行者の移動負担を軽減できたことで、空港内の人材不足解消と省力化への可能性を検証することができました。
本実証で得られた結果を基に、人材不足や省力化などの課題解決に向けて、オペレーションやサービス品質の向上に取り組んでまいります。

 

本実証にご協力いただきました皆さま、ありがとうございました。

一覧へ戻る

お問い合わせ