Column
2026.3.31
次世代通信技術を活用したnewme複数拠点遠隔区民サービス 実証レポート
―ローカル5Gとアバターロボットを活用した次世代行政BPOモデルの構築―
自治体業務において「労働力不足への対応」が急務となる中、窓口サービスの品質をどう維持・向上させるかが大きな課題となっています。
この課題を解決すべく、令和5年度に東京都「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」※1の開発プロモーターに採択された株式会社キャンパスクリエイト様の支援のもと、アバターロボット「newme(ニューミー)」を活用した実証実験をスタートさせました。本プロジェクトは、アルティウスリンク株式会社様と共同で大田区および荒川区にて展開したものです。
最大の目的は、場所にとらわれずに質の高いサービスを提供する、持続可能な行政業務における「新たな遠隔BPOモデル」の確立。
多くの来庁者が行き交う区役所では通信が混雑しがちですが、今回は次世代通信技術である「ローカル5G」を活用しています。ローカル5Gは、特定のエリア内に専用の5Gネットワークを構築できる仕組みで、一般の通信環境と比べて混雑の影響を受けにくく、高速・低遅延で安定した通信技術です。この安定したネットワーク基盤のもとで、遠隔区民サービスがどれほど有効に機能するか、その真価を測る取り組みです。
fig1:実証のイメージ
自治体内から「自治体またぎ」へ。段階的なリソースシェアの検証
本実証では、前期と後期にフェーズを分け、その有効性を段階的に検証しました。
【前期】同一自治体内における複数拠点での運用
大田区役所本庁舎と千束特別出張所の2拠点にnewmeを設置。本庁舎では昨年度※2の実証知見を活かし、より実務に踏み込んだ案内へとアップデートを図っています。一方、通常フロアマネージャーが配置されていない出張所では、初期対応をnewmeが遠隔で担うことで、職員の「窓口業務と案内業務の兼務負担」を軽減できるかどうかが大きな焦点となりました。
【後期】自治体をまたいだ遠隔区民サービスの展開
大田区役所本庁舎に加え、新たに荒川区役所本庁舎にもnewmeを配置し、自治体をまたいだ同時接続を実施。異なる組織間で「オペレーターのリソースシェア」がnewmeを通じて円滑に機能するかどうかに主眼を置いています。
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fig2:大田区役所本庁舎にて案内する様子
fig3:荒川区役所本庁舎にて設置された2台のnewme
オペレーターは日本橋から。申請書類の案内までスムーズに
実証期間中、オペレーターは日本橋のオペレーションルームから各拠点へ遠隔接続。前期は1名で計2台、後期は2名で計4台のnewmeを状況に応じて切り替え、効率的な運用を実現しています。
また、外国人来庁者に対応するため、英語対応が可能なオペレーターを常時1名、中国語対応が可能なオペレーターを週に1回1名設定しました。
大田区役所本庁舎の入り口では、遠隔のオペレーターがnewme越しに「館内のご案内をしております。お探しの窓口はございますか?」と明るくお出迎え。単なる場所案内にとどまらず、カメラを通じて「そのお手続きでしたら、こちらの書類をご記入ください」と、具体的な申請書類の案内まで踏み込んでサポートしました。
これを支えたのが、ローカル5Gの「大容量・低遅延・同時多接続」とnewmeの特性です。強固な通信基盤により、遠隔地からでもタイムラグのない、滑らかで自然な対話を生み出しています。
拠点を瞬時に切り替える、機動的なオペレーション
複数拠点を少人数でカバーするには、「今、対応すべき来庁者」を瞬時に判断する力が欠かせません。
そこで活躍したのが、newmeの「保留機能」です。他拠点で対応中の場合、画面に「対応中」とステータスを表示して来庁者にお知らせ。その間もオペレーターはPCを通じて現地の様子をモニターし続けられるため、新たな来庁者を見つければ即座に案内を切り替える、機動的な立ち回りを可能にしています。
また、自治体ごとに異なる窓口ルールや書類フォーマットに対応するため、オペレーターは拡張モニターでアルティウスリンク様のナレッジシステムを使用。常に正しい情報を調べながら対応できる環境を整えました。また、同社のBPOに関する知見を活かし「オペレーター管理者」がオペレーターをサポートすることで、自治体をまたいで切り替えた際も、現場の混乱を防ぐ工夫を凝らしています。
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fig4:オペレーションルームにて、オペレーターが2台のnewmeを遠隔から案内する様子
高い満足度を獲得!多言語対応で職員の負担も大幅減
こうしたオペレーションのもと、約2ヶ月間の実証実験は極めて良好な成果となって表れました。
・ 総対応件数:1,470件
・ 案内成功率:96.9%
・ 利用者満足度:6.1点(7点満点中)
利用者の年齢層は20代から70代までと幅広く、質問内容は戸籍住民課関連(転入出、証明書など)やマイナンバー、健康保険・年金に関するものが約7割を占める結果に。
特筆すべきは、外国人来庁者への対応効果です。
英語や中国語が話せるオペレーターが来庁者の言語にあわせて案内を実施。newmeが窓口の「前捌き」と多言語対応を担うことで、現場の職員からは「外国語対応を含めた心理的・身体的負荷が大幅に軽減された」との喜びの声も寄せられています。アバターロボットの活用は、現場のオペレーション最適化のみならず、職員の心のゆとりにも直結する有効な手段であることが確認されました。
なお、前期・後期ともに各拠点での対応件数に大きな偏りはなく、ニーズに合わせて双方の業務をカバーする「リソースシェア」の実効性も証明されています。
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fig5:千束特別出張所にて、外国籍の来庁者を案内している様子
「ガバメントサービスAI」の構築へ向けて
今回の実証で得られた知見をもとに、今後は「遠隔での有人対応」と「自動応答」を最適に融合させた「ガバメントサービスAI」の構築を目指します。
さらに、他自治体へ横展開可能なパッケージモデルを確立し、人口減少が続く社会においても、誰もが言語や場所を問わず質の高いサービスを受けられる「持続可能な地域デジタル基盤」の社会実装を加速させていきます。
最後に、本実証の実施にあたり多大なるご協力をいただきました皆さまに、深く感謝申し上げます。
※1 東京都「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」とは
東京都では、都内スタートアップ企業が、都心部から郊外・山間部、離島を持つ東京というフィールドを活かしながら、世界で通用する競争力を磨き、5Gをはじめとした次世代通信技術を活用した新たなビジネスやイノベーションを創出し、都民のQOL(Quality of life)向上に寄与する有益なサービスを創出するとともに、各スタートアップ企業の企業価値向上を目指しています。
本事業は、東京都と協働して支援を行う事業者を開発プロモーターとして募集・選定し、スタートアップ企業に対し多角的な支援を行います。開発プロモーターは、3ヶ年度にわたり支援先スタートアップ企業等の開発・事業化を促進するため、連携事業者(通信事業者や実証フィールド提供者、研究機関、VC・金融機関等)と連携しながら、資金的、技術的な支援やマッチング支援等を行います。支援先スタートアップ企業は、開発プロモーター等の支援を受けながら、次世代通信技術等を活用した製品・サービスの開発及び事業上市を目指します。
▼詳細はこちらをご参照ください(事業WebサイトURL)
https://next-5g-boosters.metro.tokyo.lg.jp/
※2 本取り組みは、令和5年度に東京都「次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業(Tokyo NEXT 5G Boosters Project)」の開発プロモーターに採択された株式会社キャンパスクリエイト様の支援を受けて、3か年にわたり実証実験をしており、今年度はその最終年度(3年目)として、これまでの知見をさらに発展させた検証を行っています。
▼昨年度までの実証の詳細に関して、詳細はこちらをご参照ください(avatarinHP掲載 プレスリリース・コラムURL)
2024年度:次世代通信 × アバターロボットによる「遠隔区民サービス」の実証レポート– 次世代通信技術活用型スタートアップ支援事業 –
https://about.avatarin.com/blog/9349/
2023年度:八丈島空港ビル観光案内所前にて次世代通信×アバターロボットを活用した遠隔観光案内の実証を行います
https://about.avatarin.com/info-news/news-release/8321/